2015/06/22

無慈悲なプーシキン

最近部活に新しく入ってきたベトナム人留学生に勧められ、ロシア文学を読み始めている。まだソ連があった時代の名残でベトナムの人々はロシア文学をよく読むらしい。自分はロシア語を学んでいるが、ロシア文化に通暁しているわけではない。ロシアについてはせいぜい大雑把に政治史を知っている程度である。正直ロシア文学はドストエフスキー『罪と罰』やカフカ『変身』くらいしか読んだことがなく、『カラマーゾフの兄弟』すら読んだことがなかった。『戦争と平和』は書店でその厚さに尻込みして購入を控えた思い出がある。

そして今回読んだのはプーシキンの『大尉の娘』。
原題は『Капитанская дочка』。

プーシキン晩年の長編散文。岩波で読んだ。刊行年を見ると1939年となっている。76年前である。
そのため文体が少々古くて慣れてない人にはうっとうしく感じるかもしれない。しかしそもそもの文章の語り口がなんともひょうひょうとしているので読みやすいであろう。やはりロシア人の名前が内容を追う上でなかなか厄介ではあるが、登場人物は多くはないためなんとかなる。
さてこの本は祖父から孫へ送った若い頃の手記という体裁をとっており、主人公つまり祖父が語り手となっている自伝のような側面をもつが、さらにプガチョフの乱に取材した歴史小説としての側面も持っている。
プガチョフの乱は19世紀初頭帝政ロシアを揺るがしたコサックによる大反乱である。その首謀者プガチョフと主人公の関わり合いをはじめとしてプガチョフの乱を軸として物語は進んでいく。

タイトルにもある大尉の娘マリアの献身的な姿には胸を打たれること間違いなしであるが、各々の登場人物の人柄もまた個性的で面白い。
とりわけ私が好ましく思ったのは主人公に仕える老従者サヴェーリイチである。彼の主人公を思うあまりの皮肉な言葉使いや諸々の行動はどこか憎めないところがあり、あなたも一読すれば彼のことを好きになっているだろう。彼が勇猛に大活躍をする場面は特に必見である。

最後の最後に主人公から読者へのリア充自慢があり、非リア読者に対して「お気の毒」という素敵な言葉を贈ってくださっている。
私はまさかプーシキンを読んでいて非リアへの哀れみを被るとは思っても見なかったため思わず苦笑してしまった。
非リア諸氏は最後の最後で心に傷を負わないように注意されたい。
おわり
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