2016/12/27

相続税について調べてみる

金融ってそんなに詳しくなかったんだけれど、最近金融系の会社の説明会に行ったら、Bloombergとか読みなさい、って言われて、その他金融系ニュースサイトを含めて読んでたら、結構興味が出てきて、いろいろ勉強するようになって、就活はどうでもよくなってきた。
そしてその中で以下のような記事を見つけた。



今は死ねない米富裕層、トランプ政権で相続税負担減

-2.4兆円の恩恵も http://bloom.bg/2gdoLpn

 

 

トランプはなにやら、先の大統領選の選挙公約で相続税廃止や贈与税制度改革なんかを提唱していたらしく、これが実現されれば富裕層はだいぶ楽になるみたい。
ヒラリーは既得権益を代弁し、トランプは庶民を代弁したなんてよく言われるけれど、トランプの隠れた大きな支持層って実はエスタブリッシュメントだと思う。みんな、あんな野蛮な人に投票するなんて公には言えないわって感じで、体裁を気にして、世論調査やインタビューでは反トランプを掲げつつも、彼の排外主義やレーシズムにひそかに共鳴していたんだと思う。結局のところ、どれだけ自由、平等を掲げたって、心の中でえげつない差別主義や選民思想を持っている人はいて、それは規制しようがないし、内心の自由で保護されているしで、なんだか救いようのない悲しみを覚える。

さて、本題は相続税の話である。上のニュースを見て、法学部なのにあんまり親族法の勉強もしたことがないし、相続税ってそもそもなんやねん、なんで正当化されんねんって思ったのでちょっとだけ調べてみました。(似非関西弁ですみません)


まず日本の場合、日露戦争の戦費調達目的で導入されたそう。当時の大蔵省は酒税や所得税、地租を相次いで増税。それでも足りず、欧米をまねて臨時で導入したのが相続税で、日露戦争は結局ロシアから賠償金をふんだくるまでにはいかなかったのでそのまま財政悪化するなかもう100年以上も維持されているとのこと。つまりそもそも日本だとただの財源目的の導入で、特に理念はない模様。。
WWⅡの後、GHQによる「シャウプ勧告」により抜本的に見直されて、財閥などの一部の富裕層に富が集中するのを防ぐため、なんと最高税率は1950年に90%に引き上げられたようです。その後引き下げられ現在の最高税率は55%。戦後の財閥解体の一環としての役割を果たした部分は大きいみたい。
ちなみに今は3000万円までは控除されるそう。さらに相続人一人につき600万円らしいので、相続される時点で一人は相続人がいるので最低控除額3600万円というわけですな。そこから額が上がるほど累進的に課税率は上がります。
じゃあ、相続人がいなかったらどうなるかというと、あなたの財産は財団法人となります。その後一定期間の後に国庫帰属するそうです。つまり、あなたの遺産が「かつら」一枚のみだった場合、かつらは立派な法人となるのです。


そんなわけで、日本での導入目的は完全に国益のため、ただそれだけみたいですが、西欧諸国においては富の再配分というのが大義名分となっているみたいです。富の偏在を防ぎ、平等を図るというわけですね。



また自由主義的には、世代内格差は許容し自由闊達な競争はどんどんせよって感じですが、世代間の財産移転については、世代内における出発点の平等を確保するために規制するべきという方向性みたいです。

たしかに、階級の再生産はよくないというのはよく聞く論点であります。しかし、実際のところ相続税や贈与税では全然抑制できてなさそう、というのが実感ですね。東大生の親の平均年収の話なんかは有名ですし。




富の偏りの実際ですが、2人以上世帯の家計貯蓄総額の約66%を、世帯主が60歳以上の世帯が占めているそうで(総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」)、2016年9月末の家計金融資産残高は1746兆円(日銀「資金循環統計」)、今後10年間で相続によって500兆円の資産移転が起こる(野村資本市場研究所)ということです。家計貯蓄、すごい。(小学生並の感想)
また僕個人としては、果たして階級の再生産がそんなにいけないのかなとも思います。再生産は固定化とはイコールではないと思うんですよね。低階層でも、少なくとも日本ではそれなりに上に行く道が開かれています。中国や韓国のように財閥や極度な階級格差もないし、アメリカのようにそこまでコネ社会でもないし。世襲議員だって、ポンコツもいれば有能もいますよね。









閑話休題。世界的には、廃止の動きが進んでいるようです。


・カナダ、オーストラリア
→1970年代に廃止。
・ニュージーランド
→1992年に廃止
・香港、シンガポール、オーストラリア、スウェーデン
→過去10年以内に廃止
・イギリス
→前首相が選挙公約で廃止を掲げる。なおロシアの富裕層が流入した模様。
・アメリカ
→ブッシュが廃止するも、オバマが復活。トランプが再廃止?これは民主党と共和党のポリシーの問題なのかも。
・ドイツ
→控除額増加で減税も維持。
・フランス
→前大統領サルコジが公約に掲げるも実施せず。

意外といろんな国が廃止してた。でも経済大国はやっぱりなかなか廃止できてはいないみたい。財政が肥大しているせいかな。。
あと、中国について。中国ではそもそも存在しないらしい。中国の貧富の格差ってほんとにえげつないイメージがあるけれど、その原因の一端かもしれない。けれど最新のニュースで以下のような記事があった。



中国「相続税」導入へ 全人代で審議入りも 格差深刻化で不満のマグマ、「固定資産税」も検討 既得権益層の反発必至 - 産経ニュース http://www.sankei.com/world/news/161225/wor1612250010-n1.html


 

全人代で法制化を審議ということで、もう共産党首脳部ではかなり議論されているのだろう。でも中国で導入されていないのはちょっと意外だったかもしれない。相続税って、私有財産制に抵触しそうな感じがするけれど、そんな近代国家に必須の制度が存在しない社会主義国家では、かなり親和性が高そうだから。


相続税は廃止すべきだっていう意見も結構あるみたいなんだけど、その大きな根拠として二重課税問題というのがある。相続税の対象となる相続財産は、そのキャッシュそのものや、おうちなどを買った資金は、そもそも被相続人が頑張って働いたお給料から出ている。そしてそのお給料には当然所得税が課せられていたはず。なので、そのような財産にもう一回税金を課すことは、二重課税ということになる。という理論である。もっと現実具体に即した難しいお話は、国税庁のサイトに論文があったので、興味があれば読んでほしい。

富の偏在を防ぐために、相続税の代わりに、税法学者マカフェリーによる累進的消費税を導入する(「相続税の是非」(浅野幸治、豊田工業大学))なんていう意見も見つけた。逆累進的な間接税である現行の消費税を、国民一人一人の年間総消費額を推定しその額に応じて累進的に課税することで、累進的な直接税にしてしまうというものだ。なるほどたしかに、そうすれば富裕者の極端な消費を抑制でき、結果的に平等が促されそうだと思った。しかし、マクロ経済的にはカネの流れが止まってしまうからよくないだろうな。まあ、現行制度でもトリクルダウンなんて本当に起きているのか疑問ではあるけれど。。。

相続税は国家歳入比は1.5%くらいである。なくしてもそんなに痛くはないし、再分配機能なんて全然実質的効果ないけど、あえて廃止にするものでもないかなというのが世間の思いなのかもしれない。


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...